ベトナム製と偽装!?
ベトナム製と原産性を偽るケースが多発
ベトナム政府は原産国の偽装が相次いでいることを受け、不当表示の取り締まりを強化する。偽装の横行が、ベトナム経由で中国などからの輸入品が第三国に流れる「迂回輸出」の温床となっているためだ。米中貿易戦争に伴う中国からの生産移管で急増するベトナムの対米輸出に米国は神経をとがらせている。ベトナムは新たな法令で、米国の制裁関税逃れを狙った中国からの迂回輸出の防止につなげる。
日本経済新聞社 2019年7月22日記事
先日、アメリカと中国間の貿易戦争で双方に関税率を上げている事実をお伝えしました。やはり、既に多くの企業が対策に追われているようです。ただ、意図してか、意図せずか、ベトナムでの原産性を偽装しているケースが非常に増えているようです。
偽装の事実とその背景
ニュース報道からご存知の通り、アメリカと中国での関税引き上げ合戦でお互いの製品に最大25%の関税が課せられるようになってしまいました。そこで企業はなんとかして、その関税を逃れようと「中国→ベトナム→アメリカ」といった形でモノを移動させた始めたのです。ベトナム製であれば、アメリカで輸入する際に高い関税がかからないからです。
政府がウェブサイトで公表した内容によると、中国からまずベトナムに輸出された中国製品がベトナム製とラベルを貼り替えられ、米国や欧州、日本に輸出される例が見つかっているとのことです。ベトナム税関総局は、産地・製造国の偽装が判明したものとして、繊維や海産物、農産品、タイル、ハチミツ、鉄鋼、アルミニウム、合板などを列挙しています。なお、行き先はアメリカだけでなく、日本や欧州にも及んでいるようです。ベトナム政府はこのような偽装に関与した企業に罰則を科すとしています。
合法的に「ベトナム製」にする方法
それではこのような迂回輸出は明らかに違法なのでしょうか?
確かに、本来中国製の物をラベルを貼り替えたりすることでベトナム製と偽ることは違法です。ただ、実際に中国から輸入した中国製の製品であってもルールに則ってベトナム製にすることは可能です。
それでは、ルールに則ってとはどういうことでしょうか?
これは先日の記事に書いたようにベトナムの原産性の条件をきちんとクリアすればいいのです。原産性の証明には、大きく関税分類変更基準と付加価値基準があります。
関税分類変更基準では、例えば中国からベトナムへは半製品(まだ製品になる前の状態)で輸出し、ベトナムで組立や加工を加え製品にすることで、ベトナムへ入って来た半製品とベトナムから出て行く製品のHSコードの分類を変更させる方法です。これによってベトナム製として証明する事が可能になります。
一方の付加価値基準では、中国から輸入した際の価格に一定以上の利益を乗せてベトナムから輸出することで、ベトナム製にするという手法です。概ね40%以上の付加価値がつけられればいいケースが多く、例えば中国から60円で輸入してベトナムから100円で輸出することで、ベトナムで付与された価値(付加価値)は40%となります。ただ、単純にモノを右から左へ流すだけで、40%の利益を載せるのであれば、直接輸出してきちんと関税を払った方がアメリカに安く輸出出来るケースも多いので、付加価値基準を採用する場合であっても組立や加工をある程度ベトナムで実施する必要があります。
先日もお伝えしましたが、このような貿易戦争が起きてからいきなり原産性を適用させるのはかなり難しいです。このような背景から、今回のような違法な偽装が増えてしまっていると考えられます。したがって、今回のようなケースを予め想定して複数国(今回のケースではベトナム)に生産拠点を有しておくことで、素早く生産工程を見直し、中国から半製品の状態でベトナムへ持って来て、その後ベトナムで加工や組立をするといった対策を取ることが可能になります。その結果、ベトナムでの原産性を合法的に確保できるのです。
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