原産品判定基準(その1)「加工工程基準」とは?
原産品判定基準の1つ「加工工程基準」とは、締約国内である特定の生産・加工工程が実施された場合に、その産品の原産性を認めるルール(SPルール)です。繊維製品や一部化学品等にこの基準は使われることが多いです。
加工工程基準の具体例(日・インドEPA)
日本とインドのEPAを例にみてみます。「付属書二(第三章関係)品目別規定」(下図)をみてみますと、絹織物(HSコード50.07)は「糸からの製造(付表に規定する必要な工程を経る場合に限る。)」となっております。そして、その付表(B 織物)をみますと、絹織物を含む「織物」について、「締約国において当該締約国の原産品とされるための必要な工程」として、以下の4つが記載されています。
- 紡績工程
- 糸を侵染し、又はなせんする工程
- 織り工程
- 織物を侵染し、又はなせんする工程
そのうち、「1と3」、「2と3」、「3と4」の工程のどれかを充たせば、つまりこの3つの組み合わせのどれかの工程を経て締約国内で織物が生産されれば、原産性が認められることとなります。
FTAやEPAによって異なる基準
上記のように、日・インドEPAにおいては、絹織物の原産品判定基準は、品目別規定において加工工程基準のみが規定されているので、この基準による必要があります。一方、日・メキシコEPAでは、加工工程基準ではなく、下図の通り同じ絹織物でも関税番号変更基準が規定されています。このように、EPAによって規定が異なる可能性が高いのも加工工程基準の特徴ですので、よく各FTA、EPAをご確認ください。
また、同じ加工工程基準であっても、品目別規則の規定の仕方や、「注」によっって細かく条件が設定されていることも多いので、各FTA、EPAの協定書の要求内容を性格に把握する必要があります。
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Author:S.I 投稿一覧
2002年筑波大学国際関係学類卒業後、空気圧機器の世界トップメーカーであるSMC株式会社入社。働きながら中央大学の社会人向けビジネススクールに通い2014年3月にMBA取得。2018年までの16年間、当該メーカーにて国際税務(特に移転価格)の経験を積み、多国籍企業の法人税節税に貢献(2018年7月に当該メーカーを退社)。国際税務を担当する中で、多くの企業が関税を無駄に払っている現実に直面。この問題を解決する一助として、独学でプログラミングを習得し、HSコードや関税率を簡単に検索できるサービス「HS CODER」https://hs-coder.com/ を公開、現在運営中。更なるサービス拡大を目指し、2018年10月株式会社ワッグワックを創業。また、2022年2月にフォワーダーのための関税削減アプリhttps://lp.tarifflabo.com/ を開発、公開。現在に至る。