原産品判定の有効期限との判定資料の保存義務について
原産品判定に有効期限なし
原産品判定には、特に有効期限はありません。したがって、一度原産品の判定を受ければ、判定した時から産品について変更がない限り、その判定した資料はそのまま活用することができます。
日本の場合、日本商工会議所で審査した結果、原産品であると認められた産品については、その承認を受けた日以降、当該産品の特定原産地証明書の発給申請を行う際に証明資料の提出を省略できます。つまり、原産品の判定依頼の時に提出した資料の内容に変更がない(=原産品判定の根拠になんら変更がない)場合は、その判定結果をもって、同一の産品について繰り返して特定原産地証明書の発給を申請を行うことができます。
ただし、当該産品の生産に関して、材料や部品の調達先や価格が変動し判定結果に変更が生じた場合は、原産品判定依頼が再度必要になります。
特定原産地証明書に有効期限あり
一方、特定原産地証明書には有効期限があります。特定原産地証明書の有効期限は、各FTAに規定されていますが、日本が締結しているEPAのほとんどが発給から1年です。ただし、日本・フィリピン間のEPAは、発給から6ヶ月となっているので注意が必要です。
原産品判定は、早めに準備可能
このように原産品判定については期限がないため、証明資料の内容が変わらない(原産品の構成部品・材料あるいはその価格に変更がない)限りについては、輸出時期が決定する前に予め準備して、判定して置くことができます。一方、特定原産地証明書の申請については、予め取得しても1年間で切れてしまうため、輸出時期がある程度固まってから申請する方が効率的です。
申告データや立証資料の保存義務
原産品判定に用いた申告データや証明資料(伝票、書類等)は、法律上、証明書発給日から5年間の保存が義務付けられています。ただし、日・スイス、日・ベトナム、日・ASEANのEPAは例外的に3年間となっています。
なお、ご参考までに日・モンゴルEPAでは、第3・17条に5年間の保存義務が定められています。
日・EU EPAの保存義務は要注意
日・EUのEPAについては、非常にややこしいので注意が必要です。協定上、記録の保管義務は、輸入者は産品を輸入した日から最低3年間、輸出者は原産地に関する申告文を作成した日から最低4年間と定められています。なお、原産地に関する申告文を複数の輸入申告に適用する場合、保存期間の起算日は、申告適用期間の最終日からとなります。
ただし、日本への輸入においては、国内法令上、輸入者の書類保存義務は5年、輸出者の書類保存義務は4年と定められていることから、輸入者には5年間の書類保管が求められます。それぞれの保管書類の種類は下記です。
<輸入者>
- 輸入者の自己申告の場合は、産品が原産品としての資格を得るための要件を満たすことを示すすべての記録。
- 輸出者・生産者の自己申告の場合は、その申告書面。
<輸出者 or 生産者>
- 申告書面のコピー
- 産品が原産品としての資格を得るための要件を満たすことを示すすべての記録。
協定で決められた内容は国際法上、国内法に落とし込んで初めて国内的な効力が発生しますが、その国内法によっては今回のようにより厳しい内容になることがあり、その場合は国内法が優先する(輸入車の保存義務期間は5年)ので注意が必要です。
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