「原産材料のみから生産される産品」の原産性の判定基準は?
2019年10月2日の原産品の3つの基準の2つ目「原産材料のみから生産される産品」とは、「締約国の原産材料のみから締約国において完全に生産される産品」と定義されています。ここでいう、「締約国の原産材料のみから生産される」とはどういう意味でしょうか? また、「完全に」とはどういう意味でしょうか?
「締約国の原産材料のみから生産される」とは?
「締約国の原産材料のみから生産される」とは、最終生産品の生産に使用される材料そのものが特定原産品(FTA・EPAの原産地規則に基づいて原産性を充している産品)であり、このような材料のみを用いて生産されることを意味しています。このような材料を原産材料といいますが、そもそも非原産材料であったとしても「実質的な変更」を加えることで原産材料となります。
「実質的な変更」とは
材料を製造する過程で、締約国以外の第3国から輸入された材料(=締約国の非原産材料)を用いている場合、この非原産材料に「実質的な変更」を加える形での加工や製造が行われていれば、出来上がった材料は原産材料になります。このように締約国において加工され原産材料となった材料のみを用いて生産された最終生産品が「原産材料のみから生産される産品」に該当します。
ここでいう「実質的な変更」とは、他の国を原産地とする部品や原材料等について、製造・加工を促して大きな変更を加えることです。いわゆる「関税番号変更基準」、「付加価値基準」や「加工工程基準」を充たす変更を意味します。
例えば、鉄鉱石(HSコード:2601)は、非原産の輸入原材料である場合、それを日本で製鉄してできた鉄のインゴットを圧延した鉄の薄板(HSコード:7211)のみを用いた生産品をタイに輸出する場合を考えてみます。
日・タイEPAの品目別規則によれば、関税番号変更基準(CTCルール)もしくは、付加価値基準(原産割合40%:VAルール)によって原産品として認められるので、上記薄板は、鉄鉱石からCTCルールを充たすような加工がすでになされ、「実質的な変更」となり日本の原産材料と認められます。この鉄の薄板をさらに加工し、鉄のキャビネット(HSコード:940310)を生産した場合、出来上がったキャビネットは、締約国の原産材料のみを用いて生産された原産品となります。
「完全に」とは
「完全に」とは、生産に関する一連の行為全てが一つの締約国において行われることを意味します。
「累積」について
最終生産品の生産過程でFTAやEPAの締約相手国の原産品の材料として使用した場合、この原産品ももう一方の締約国の原産材料とみなすことができます。これを「累積」といい原産品判定における救済策の一つです。
まとめ
このように、上記基準を検討していくことになりますが、最終生産品の生産過程において、1部でも締約国の原産材料と認められない原材料(=非原産材料)が用いられている場合には、「原産材料のみから生産される産品」には該当しません。この場合は、「非原産材料を用いて生産される産品」として原産品と認められるのかの検討が必要になります。
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