日EU EPAは特恵関税適用の遡及申請がTPP11と違って認められていません!
音声の解説はこちら!!
日EU EPAでは遡及適用は認められていない
2018年12月に発効されたTPPは、輸入から原則1年以内であれば事後申告により支払った関税の還付を受けることが可能ですが、日本とEU間のこの度のEPAでは遡及適用が条文上認められておりません。
したがって、輸入時に特恵関税の申請をしない限りは後で適用してもらうという事が出来ませんのでご注意ください。つまり、現時点ですでに発効しておりますので、せっかく特恵関税を利用できるにも関わらず利用しないと、後から遡及できないので、どんどん機会損失が増えていってしまいます。
TPP11では遡及適用が認められている
TTP11では、輸入後の特恵関税適用の遡及申請は、その時点で資格を有していれば、輸入から原則1年以内であれば事後申告により支払った関税の還付ができる旨が、3.29条1に記載されています。しかし、日本とEU間のEPAではその規定がありません。
このような規定がないため、日EUのEPAでは「認められない」と考えるのが自然です。
2019年2月1日から現時点までの輸入分について日EU EPAの遡及適用はできません!
すでに、日本とEUのEPAは2019年2月1日に発効されておりますので、TPPと同じような規定であれば、2019年2月1日以降から現在までの過去の分の遡及申請ができるのですが、例えば、2019年5月にEUや日本で輸入した分については後から還付を受ける事がもうできません。
従いまして、日本とEUのEPAを活用できる可能性が高い場合は至急対応を進められることを強くお薦めします。
原産地証明書の船積み後の遡及発給は可能
一方、通常は船積み時に原産地証明書を付して輸出しますが、緊急に出荷する必要がある等で間に合わない場合、船積み後に原産地証明書を発給する「遡及発給」は日EU EPAやその他のFTAでも通常認められています。例えば、日本・ASEAN EPAでは船積み後12ヶ月間は遡及発給が認められています。
ただ、遡及的に輸出国側で原産地証明書が発行されたとしても、その申請が輸入国の通関後であった場合、関税の還付が受けられるかについてはTPP以外については協定上記載がなく、各国の国内法の運用に任せられます。したがって、輸入国に関税還付制度がそもそもあるのか、あった場合に必要な手続きは何かといった詳細は各国の国内法を個別に確認する必要があります。
したがって、保守的に実務上は一度払った関税は還付されない、あるいは、されたとしても手続きが煩雑と認識していた方がよろしいかと考えます(一度申告した内容を後から変更することは正式な変更に値する理由が必要になるので通常は手間がかかると考えた方が自然です)。一方代替案として、保管料がかかるケースはありますが、船積み後に遡及発給した場合は、輸入国側で通関せずに保税のまま蔵置して、原産地証明書が輸入国に到着した後にEPAを適用して申告するという手法があります。
なお、この記事に関するお問い合わせや専門家への無料相談はこちらから!
-
前の記事
ベトナム製と偽装!? 2019.07.27
-
次の記事
【2019年8月1日から】日EU EPAの一部運用の簡素化 2019.08.02