船積み後でも特定原産地証明書の発行してもらえるの?
原則は船積み前の発給
特定原産地証明書の発給申請は、原則として船積みまでに行うことになっています。しかし、至急輸出しなければならないケースもありますので、FTAでは事後であっても発給できる手続きが規定されています(遡及発給)。原則としては、船積み後12箇月間は、遡及発給ができるようになっています。ただし、例外として日・メキシコ EPAや日・チリ EPAは輸入後1年間です。また、日・スイス EPA、日・ペルー EPAは期限なしで、日・インド EPAは船積み日が2018年年3月1日以降の場合12箇月間、船積み日が2018年2月28日までの場合9ヶ月間とかなり複雑です。
このように各EPAによってかなりばらつきがありますので、きちんと各EPAの条文を確認することが必要になってきます。
特定原産地証明書への記載の仕方も各EPAによって異なる
証明書発給日が船積日の後になるケースについては、特定原産地証明書のField3(Means of transport and route 欄)に船積日が記入され、またRemarks 欄に「ISSUED RETROACTIVELY」が印字(※日・アセアン EPAはField 9、日・インド EPAはField8のボックスをチェック)され、日・メキシコ、日・スイス、日・ペルー、日・オーストラリアEPAでは、「ISSUED RETROSPECTIVELY」が印字されます。日・モンゴル協定では、船積み日を記載すれば何も記載されません。
また、特筆すべき点としましては、日・インドネシア EPAの運用手続規則ルール3や、日・アセアン、日・ベトナム EPAの実施規則ルール7には、「船積時までに、若しくは、船積日から3日以内」に原則発給される旨の規定があります。これは、原則船積時までに証明書を発給する日本の運用と、船積日確定後に証明書を発給する締約相手国側の運用の実態を踏まえて規定されたものです。
日本でのEPAに基づく証明書発給については、証明書を船積日確定前に発給することで、輸入通関時におけるEPA税率申請が円滑に行われるよう、「船積時までに」発給する運用が採用されています。
なお、日・フィリピンEPAは、運用上の手続規則ルール2において、船積日後1日以内に発給と規定しています。また、日・インドEPAは、運用上の手続ルール3において、船積時から3日以内に発給と規定しています。
このようにここの部分は各国の運用を配慮した形で協定が締結されており、かなり複雑なので、各国毎のEPAを細かく確認ください。
輸入締約国での還付制度の確認が必要
一方、遡及的に発行したとしても、関税の還付を受けられない可能性もあります。国によっては、関税還付制度がない国もあります。つまり、輸入通関後に遡求的に発給さてた特定原産地証明書を提出しても、関税の還付を受けられない場合もあります。これは各国の国内ルールをよく確認する必要があります。関税還付等の制度の有無や還付に必要な手続きについては、輸入国において個別に確認する必要があります。
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