中華圏のFTAを活用する!(香港編)
FTAは広域になればなるほど、その活用の幅や層が広がり、活用した時のインパクトも大きくなります。以前、中国のカントリーリスクを避けるためにベトナムに第2の生産拠点を設けることの有用性をお伝えしましたが、生産拠点を移すということはなかなか設備資金等で現実的にすぐ動けないケースも多々あります。
そこで、いまある中国の活動拠点をより有効に活用するにあたり、香港・中国間のFTAを活用するという手段があります。
香港・中国 FTAを活用する
香港は、中国との実質的なFTAである「香港・中国 経済貿易緊密化協定(CEPA)」を2004年1月に発効させています。最近ではこの枠組みの下で、物品貿易に関する新たな協定を結び、その協定は2019年1月1日から施行されています。
今までの原産地規則である「産品特定原産地規則」では、香港原産地品の1,900品目を中国がゼロ関税で輸入しておりましたが、今回新たに導入される「一般性原産地規則」の条件(域内原産割合が一定割合以上(積上計算方式の場合は30%以上、減算計算方式の場合は40%以上)を満たせば、これまで適用の範囲外だった物品にもゼロ関税が適用されるようになりました。これにより、ゼロ関税の範囲が約6,000品目に拡大が見込まれます。このようにますますCEPAを活用する意義が高まっており、対中貿易の拡大が期待できます。
といいますのは、日本と中国の間では2019年12月現在EPAが存在しないので、このような香港経由で中国市場に販売することで関税を安く(あるいはゼロに)することが可能になるからです。さらには、多くのEPAでは付加価値基準は40%であることが多いですが、積み上げ方式であれば30%となっており、原産性の基準が緩和されています。
CEPAを活用してサービス事業を推進
CEPA活用していく中で注目すべき点は、物品の貿易のみならず、それ以上に「調達・物流」「流通・小売・販売」「旅行・観光」「金融」などサービス貿易において様々なビジネス・チャンスがもたらされることです。先日お伝えした通り、シンガポールや香港は地域統括会社の設立に適していますので、サービスの拠点として香港を活用することで、中国の大きな市場を関税ゼロでサービスの対象とすることが可能になります。
なお、中国へのサービス市場進出についてCEPAを活用するためには、「中国への投資主体となる香港法人が香港企業として実質的に経営活動を行なっていること」が要件になりますので、具体的には、以下の3つが必要です。
- 香港において3年(場合によって5年)以上の経営活動がある
- 香港に実質的な業務活動拠点を有している
- 香港法人における全従業員の50%以上が香港人である
以上の条件を満たす香港法人を設立することで、サービスの拠点として中国市場に関税ゼロで進出することが可能になります。
サービスの対象は東南アジアへも拡大
このようにCEPAの活用では、香港を「サービス貿易の拠点」としてサービス市場解放のメリットを最大限活用することがポイントになります。また2017年11月には、香港とASEANがFTAと投資協定を調印、うち5カ国間(ラオス、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム)のFTAと投資協定が、それぞれ2019年6月11日と17日に発効しました。
一方、香港と残りのASEAN5カ国(ブルネイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、カンボジア)間のFTAなどの発効スケジュールは明らかになっておりません(7月12日時点)。
このFTAの一部発効により、香港からシンガポール向けの全ての香港原産品(注)の関税はゼロとなるほか、香港からラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム向けの香港原産品は、品目別および国別に関税の引き下げと撤廃が段階的に実施されることになっており、宝飾品、衣類・アクセサリー、腕時計、時計、玩具などが関税の引き下げや撤廃の対象となる。
一方、香港原産品と認められるには、下記1.~3.のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 香港で全て入手された、または加工された物品
- 1つ以上のFTA加盟国・地域の材料を用いて、香港で加工された物品
- 香港で全て入手された、または加工された物品ではないが、域内原産割合が40%以上、または、FTA 第3章(原産地規則第5条の別表3-2)で定める商品特別規則を満たす物品
このように、香港と東南アジア間のFTAも今後ますます拡大が見込まれ、香港を拠点したサービス市場の規模はより大きくなることが予想されます。是非活用をご検討ください。
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