年内の合意は困難!?EU英国 FTAの争点 漁業権の扱いについて
動画解説はこちら!!
イギリスとEUのFTAの年内の合意に暗雲が立ち込めています。争点の一つであるEU加盟国の英国での漁業権の扱いについてまとめました。具体的には、イギリスの排他的経済水域(EEZ)で今まで通りEU加盟国が漁業を行えるかが争われています。
英海域でのEU加盟国の漁業権の扱い
背景
EU加盟国は漁獲量を守ったうえで他の加盟国の排他的経済水域(EEZ)で操業できることになっています。これまで英国水域では、英国のほか、主としてオランダ、ベルギー、フランス、デンマーク、アイルランド、スペイン、ポルトガルなどの漁船が操業しておりました。
しかし、今回のイギリスのEU離脱後、イギリスの排他的経済水域(EEZ)でEU加盟国は漁業可能かということが問題になってきます。なぜならイギリスはEU加盟国ではないからです。
なお、英海域の水産物のうち英漁船が捕るのは32%にすぎず、43%はEU加盟国といった実情のあります。このままですと、EU加盟国の漁師らは英海域で操業できる権利を失う形になります。
(参考)EEZとは?
EEZとは排他的経済水域と呼ばれ、領海の外側にあり、沿岸から二〇〇海里以内の水域のことを言います。沿岸国に天然資源の開発・管理などについての主権的権利や海洋汚染規制などの権限が認められます。
(参考)主権的権利とは?
主権的権利とは、設定水域の海上・海中・海底、及び海底下に存在する水産・鉱物資源並びに、海水・海流・海風から得られる自然エネルギーに対して、探査・開発・保全及び管理を行う排他的な権利(他国から侵害されない独占的に行使できる権利)をいいます。
英国の主張
英国の海は英漁船のものであり、英国のEEZでの他国の漁は認めないという考えです。したがって、今回のFTAとは切り離して、各国の漁獲量等につき毎年見直したい意向です。
EUの主張
今まで通り漁業が操業できるようにして欲しいという考えです。したがって、漁業で納得できる合意ができなければ、貿易でも合意するつもりはないとの主張をしています。EUは協定の一部と位置付け、英領海内での加盟国の漁獲枠の安定的確保について合意したい意向です。
この記事に関するお問い合わせや専門家への無料相談はこちらから
-
前の記事
20年以上ぶりの合意!米国 EU 関税削減合意 まずは一部の輸入品から 2020.08.25
-
次の記事
年内の合意は困難!?EU英国 FTAの争点である「公正な競争条件の確保」とは? 2020.08.27