年内の合意は困難!?EU英国 FTAの争点である「公正な競争条件の確保」とは?
イギリスとEUのFTAの年内の合意に暗雲です。争点の一つであるEU加盟国の「公正な競争条件の確保」についてまとめました。EUは、イギリスに対して公正な競争条件の確保を強く求めている状況です。
目次
「公正な競争条件の確保」の背景
イギリスがEUを抜けて「第三国」となった今、イギリスとEU加盟国の間では競争が発生することになります。これまでEUの厳しい基準に合わせていたイギリスが規制や補助金制度を独自に緩和すればEU加盟国が不利になると警戒しています。つまり、労働市場や環境に関する規制、国家補助、安全基準などの規制レベルを引き下げることによって、イギリスが不公正に競争力を高めることをEUは警戒している背景があります。
EU側による「公正な競争条件確保」の主張
英国が関税ゼロの継続を求めるなか、一方的な規制緩和などで競争力を不当に高めることがないように「公正な競争環境」の確保をEUは最重視してます。したがって、EUのルールに合わせないのならば、英側に関税ゼロなどの通商条件は認めないとまで言っています。まとめれば、関税ゼロなど自由の高いFTAを望むならば、イギリス側はEU基準を受け入れる必要があるという主張しています。
英国側による「公正な競争条件確保」への反論
EU加盟時と同じような環境を構築する義務が発生すれば、イギリスとして離脱した意味がないとのことで、これらの要求に難色を示しています。離脱して第三国となることで、主権を回復し自ら決定権を持とうとした動きが今回のイギリスのEU離脱であることを考えると当然の帰結といえます。一方、イギリスはEUとの貿易取引量は多く、EUに輸出した際に関税がかかることになればイギリス経済に与える影響も大きいため、無下にもできない状況です。
今後どこまで両者が歩み寄れるか問われています。
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Author:S.I 投稿一覧
2002年筑波大学国際関係学類卒業後、空気圧機器の世界トップメーカーであるSMC株式会社入社。働きながら中央大学の社会人向けビジネススクールに通い2014年3月にMBA取得。2018年までの16年間、当該メーカーにて国際税務(特に移転価格)の経験を積み、多国籍企業の法人税節税に貢献(2018年7月に当該メーカーを退社)。国際税務を担当する中で、多くの企業が関税を無駄に払っている現実に直面。この問題を解決する一助として、独学でプログラミングを習得し、HSコードや関税率を簡単に検索できるサービス「HS CODER」https://hs-coder.com/ を公開、現在運営中。更なるサービス拡大を目指し、2018年10月株式会社ワッグワックを創業。また、2022年2月にフォワーダーのための関税削減アプリhttps://lp.tarifflabo.com/ を開発、公開。現在に至る。