関税番号変更基準の救済措置「デミニマス」
僅少の非原産材料(デミニマス)規定
ある部品で全体に占める割合が小さいにも関わらず、当該部品のHSコードが産品のHSコードと同じために、関税番号変更基準の要件を充たさない場合の救済措置として、ある一定割合の非原産材料に対して、関税番号変更基準の評価から外して考えることができます。これを「僅少の非原産材料(デミニマス)」といいます。
日・タイEPAでのデミニマス規定
日本とタイのEPAで具体的に見てみます。第30条で「付属書二に定める」とありますので、同時に付属書二の内容も確認します。
日・タイEPA 30条
日・タイEPA 付属書二
これによると、
- HSコードの第19類〜24類:産品の価額の7%
- HSコードの第28類〜49類、64類から97類:産品の価額の10%
- HSコードの第50類〜63類:産品の重量の10%
となっております。
したがって、日・タイのEPAでは、該当する産品について、非原産材料が上記の割合以下であれば、たとえ非原産材料が含まれていたとしても、産品全体を原産品としてみなすことができます。実務上も、すべての部品について関税番号変更基準を充たすことは難しい場合もあり、また、残り10%にたくさんの部品がある場合もあります。そういった場合、この救済規定を併せて適用することで、原産性有りと出来ますので、デミニマス規定は非常に重要です。
ただ、デミニマスの規定が適用されない産品もあるので、上でみたように個別のEPAやFTAの原産地規則を確認する必要があります。
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Author:S.I 投稿一覧
2002年筑波大学国際関係学類卒業後、空気圧機器の世界トップメーカーであるSMC株式会社入社。働きながら中央大学の社会人向けビジネススクールに通い2014年3月にMBA取得。2018年までの16年間、当該メーカーにて国際税務(特に移転価格)の経験を積み、多国籍企業の法人税節税に貢献(2018年7月に当該メーカーを退社)。国際税務を担当する中で、多くの企業が関税を無駄に払っている現実に直面。この問題を解決する一助として、独学でプログラミングを習得し、HSコードや関税率を簡単に検索できるサービス「HS CODER」https://hs-coder.com/ を公開、現在運営中。更なるサービス拡大を目指し、2018年10月株式会社ワッグワックを創業。また、2022年2月にフォワーダーのための関税削減アプリhttps://lp.tarifflabo.com/ を開発、公開。現在に至る。