原産地規則の構成について
先日、FTAで重要な資料3つのうちの一つが「第3章 原産地規則」とお伝えしました。つまり、産品の関税率がFTAを活用して低くなるかの前提として、対象となる産品がFTAの原産地規則に沿っているかどうかの確認が必要になります。今回は、細かい内容ではなく、原産地規則の構成について説明します。
原産地規則の構成
原産地規則とは、原産品を決定するルールが記載されていますが、事細かに規定が設けられております。例えば、日本とタイのEPAの原産地規則(第3章)は、以下のような条文が設けられています。
第3章 原産地規則
- 第27条 定義
- 第28条 原産品
- 第29条 累積
- 第30条 僅少の非原産材料
- 第31条 原産資格を与えることとならない作業
- 第32条 積送基準
- 第33条 組み立ててないか又は分解してある産品
- 第34条 代替性のある産品及び材料
- 第35条 間接材料
- 第36条 付属品、予備部品及び工具
- 第37条 小売用の包装材料及び包装容器
- 第38条 船積み用のこん包材料及びこん包容器
- 第39条 関税上の特恵待遇の要求
- 第40条 原産地証明書
- 第41条 照会に対する回答
- 第42条 輸出に関する義務
- 第43条 原産地証明書に基づく確認の要請
- 第44条 原産品であるか否かについての確認のための訪問
- 第45条 原産品であるか否かに関する決定と及び関税上の特恵待遇に係る決定
- 第46条 秘密性
- 第47条 虚偽申告に対する罰則と措置
- 第48条 雑則
- 第49条 原産地規則に関する小委員会
原産地規則の3つの要素
本当にたくさんの条文があって嫌になりますが、、、これらは、大きく3つの要素に分けられます。特に原産品判定基準が、原産性の判断の基準が記載されていますので重要になります。
- 原産品判定基準
- 積送基準
- 手続規定
以下、順に説明します。
1. 原産品判定基準
原産性判定基準には、当事国の原産品であるかを判定するための基準が書かれています。大きく「一般規則」と「品目別規則」に分けられます。「一般規則」には、実質的変更基準として、「関税番号変更基準」、「加工工程基準」、「付加価値基準」があります。
なお、日・タイEPAでは、第32条の積送基準を除く第27条から38条までが、原産品判定基準に関する規定になります。
「品目別規則」は、「一般規則」で示された基準およびその他の基準のうち、各品目についてどの基準を適用すべきかそれぞれ規定したものです。実務上は、「関税番号変更基準(CTCルール)」か「付加価値基準(VAルール)」のどちらかで判定するといったケースが多いです。
2. 積送基準
積送基準は、原産資格を充たすための輸送に関する条件です。当事者間で直送すれば特に問題ありませんが、途中で別の国や地域の港を経由する場合に特定原産地証明が有効となる条件を規定しています(日・タイEPAの第32条)。
3. 手続規定
手続規定は、原産品であることを証明するための手続きについての規定です。原産地証明書を取得し、その後の運用上の義務について規定されています。日・ペルーEPAでは、第39条から第49条までがこれに該当します。
以上簡単ですが、その構成を見ました。たくさんあって、どこを見たらいいか悩まれると思いますが、実務では「関税番号変更基準(CTCルール)」と「付加価値基準(VAルール)」どちらかが満たされれれば、原産性有りと判断されることが多いです。もちろん最終的にはきちんと条約を確認する必要がありますが、大まかな判断として頭にいれておいてくレレばと思います。なお、この2つのルールの詳細は2019年8月30日の「輸出品の原産性はどうやって証明するのか?」で説明していますので、是非ご参照ください。
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