ASEAN・中国 FTAを活用する!!

ASEAN・中国 FTAを活用する!!

なぜ、ASEAN・中国 FTAか?

 日本企業にとって、もっとも活用したいFTAの一つがASEAN・中国 FTAです。特徴的なのは、中国がASEAN・中国における「リインボイス」を利用した仲介貿易を認めたことで、アジアにおける貿易・決済・金融機能をシンガポールや香港の「アジア統括会社」に集中させる取引形態が可能になったということです。

 また、ASEANと中国を合わせると、人口約20億人の巨大市場です。このFTAを活用することで、この市場が事実上の一つの統一市場として扱えるのです。つまり、日本企業は、ASEANや中国に製造・販売・サービスの拠点を設けることで、20億円の自由市場にアクセスできるようになったのです。

リインボイスによる広域ビジネス取引の実現

 ASEAN・中国 FTAは、リインボイスを利用した広域ビジネス取引システム(具体的にはさきほどご案内したシンガポールや香港を貿易・金融拠点とする広域サプライチェーン)を構築する上で非常に有用です。ASEAN・中国 FTAの締約国には、シンガポール、香港といったアジア有数の貿易・金融センターがありります。したがって、当該FTAを活用すれば、シンガポール・香港をアジアビジネスの拠点とするリンボイス利用の広域ビジネスを展開でき、これは日本企業の海外ビジネス戦略においても非常に魅力的なものになります。

 リインボイスを利用する一般的取引形態は、原材料・資材の調達において、商流については、FTA域内の第三国の貿易拠点(地域統括法人)を経由して実施し、物流は直接、原材料・資材の調達先から現地生産法人に直接輸送します。もちろん、いずれの国(輸出国・輸入国・第三国)も締約国であることが前提です。このようにリインボイスを使った取引は、2010年10月にASEAN・中国 FTAの第二修正議定書が署名され、リインボイスを認める条項が盛り込まれたことによるものです。

 具体的に、ASEAN・中国 FTAで得られるメリットは、域内11カ国の材料・部品については累積ルールが適用されるため、生産品の多くで原産性を取得できるため、締約国で輸入する際に関税が減免される。また、域内から資材・材料や部品を調達する場合も、特恵税率が適用されるため生産コストを低く抑えることが可能です、これはFTA11カ国域外に輸出する場合であっても、輸入した国で特恵税率が適用されなかっとしても、製造コストを低く抑えられていることでその国において高い価格競争力を発揮すること可能です。

リインボイスによる取引モデル

例えば、中国製部品をシンガポールの貿易拠点(地域統括会社)を通じて、ベトナムのグループ生産工場(現地法人)に供給し、このベトナム工場において組み立てた製品をASEAN・中国 FTAの締約国に販売するといったモデルです。ベトナムで生産した製品は、中国から輸入した部品について累積ルールが適用されるため、ベトナムの原産性が認められ、それによってベトナムからそれ以外の締約国に輸出する場合に原産地証明書を付すことで、輸出先(輸入国)にて関税が減免されます。

 なお、この取引モデルは、物流は中国からベトナムに直接輸送されますが、商流はその間にシンガポールを通します。つまり、一旦中国からシンガポールに部品を販売し、その部品をシンガポールがベトナムに再販売(リインボイスの発行)します。このようにシンガポールを間に挟むメリットですが、中国とシンガポールの取引は人民元建て、シンガポールとベトナムの取引はベトナムドン建てといった形で取引することで、現地生産工場であるベトナムや中国で為替リスクを負わせないといった形を取ることが可能です。そうしますと、生産工場側で生産コスト安定的な管理が可能になります。中国では販売価格が為替リスクを負わず、ベトナムでは仕入価格が為替リスクを負わないため粗利に為替リスクという不確定要素が入り込まないためです。

 このように、このスキームを用いることでグループ企業間取引で為替リスクの軽減をはかるだけでなく、FTA域内からの広域資材調達(安くて品質のいいものを関税を気にせず広く選べる)、調達・生産コストの低減(特恵税率の適用)、締約国への広域販売(販売先で関税が減免)などの複合的なメリットが得られます。このことによって、グループ企業全体の競争力を高めることに繋がります。

 アジアに拠点のある企業様はぜひこのようなスキームも検討ください。ここでは詳しく述べませんでしたが、シンガポールは法人税が安いので、リインボイスによってシンガポールに利益を多めに落として節税することも可能です(ただ、こちらは移転価格の問題が別途つきまとうのでご注意ください)。不自然にシンガポールに利益を落としている場合は、中国や、ベトナムで課税されるリスクがあります。

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